すべてがif

毎日同じことを繰り返しているように思えても、実際にはまったく同じ条件で同じことをすることはできない。いつでも、前とは違っている。毎日同じ時間に、同じ道を通って仕事に行くのであっても、その日の天候だとか、そのときの自分の体調だとか、その道を同じ時間に通行している人たちだとか、いろんなことが違っている。当たり前のことなのだけど、忘れていることが多い。繰り返すことによって、「同じことを繰り返している」という認識だけが自分のなかに残り、それ以外の「少しずつ違うこと」は無視されていく。
「ある条件下で育った子供は、そうでない子供に比べて、こういう育ち方をする可能性が高い」という報告がなされることが度々ある。最近では、幼少期に睡眠時間が少ないと太りやすいという説が発表されたそうだ。
こういう研究にも意味はあるのだろうけれど、正直なところ、それほど役に立つようには思えない。その子供たちはすでに育ってしまっているのだから。「では、どうすれば『標準』に戻っていくのか」という研究ができるのならば価値はあるかもしれないけれど、それが還元されるのもやはり次の世代以降になる。当人たちは調べられて考察されて、それだけだ。
「子どもに悪影響を及ぼす」という言葉がある。できれば子どもには悪いものは与えたくないから、この言葉は強い。でも、本当に悪影響があったかどうかを検証することはできるだろうか。同じ条件で同じことを繰り返すことはできないのだ。どんなにサンプルを集めたところで、まったく同じ条件で育ってきた人間なんているはずがない。
あらゆることは「同じように繰り返されている」かもしれない。それを認識した上で、それぞれの「少しずつ違うところ」を忘れないようにしたい。